top of page
  • 執筆者の写真翔 山﨑

2023年は電力インフラ整備元年となるか?



明けましておめでとうございます。

本年も何卒よろしくお願いいたします。


倉持建設工業は本日が仕事始めです。昨日までごろごろとしていましたので、なかなか頭がしゃきっとしませんが、頭の体操と思って、少々重ためのテーマを扱っていこうと思います。


昨年の12月22日、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で基本方針を示し、今年の通常国会に法案を提出することとなりました。


『「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行』の基本的な考え方として、以下の方針が示されています。


・今後10年間で150兆円の投資が必要という試算

・「GX経済移行債(仮称)」等を活用した大胆な先行投資支援

・カーボンプライシングによるGX投資選考インセンティブ

・新たな金融手法の活用


とまぁ、いきなりよくわからないわけですが、ひとつひとつ考えていきたいと思います。


ついにカーボンプライシング(炭素税)導入!?

さらっとカーボンプライシングと言っていますが、カーボンプライシングってあのカーボンプライシング?炭素の排出量に応じて罰金払うっていうあの?

ロードマップ見ると排出量取引市場を2026年から本格稼働させるとなっています。あと4年しかないけど、4年で実現するの?

化石燃料輸入者に対して「炭素に対する賦課金」制度を2028年から導入する、ともなっています。

かなり野心的な内容だと思います。


そして、「GX経済移行債(仮称)」という新しい債券に関しては、このカーボンプライシングを財源としているようです。

その規模、なんと20兆円規模。

しかし、その発行は2023年から!市場が始まるより早いけど大丈夫か?


また新たな金融手法の活用として、公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法の確立が重要である、となっていますが、それって新しくなくない?第3セクターって言わない?


まぁともかく、20兆円の政府資金を投じ、今後10年間で150兆円もの投資を呼び込むという壮大なプランであることはわかってきました。

このお金で、具体的には何をやるのか?

その内容については、以下のような項目になっています。


①徹底的な省エネの推進、製造業の構造転換

②再生可能エネルギーの主力電源化

③原子力の活用

④水素・アンモニアの導入促進

⑤カーボンニュートラル実現に向けた電力・ガス市場の整備

⑥資源確保に向けた資源外交など国の関与の強化

⑦蓄電池産業

⑧資源循環

⑨運輸部門のGX

⑩脱炭素目的のデジタル投資

⑪住宅・建築物

⑫インフラ

⑬カーボンサイクル

⑭食料・農林水産業


うん、多いな。多いよ。

ここでは、②の「再生可能エネルギーの主力電源化」について触れていきたいと思います。


再生可能エネルギーの主力電源化には大幅なインフラ投資が必要

ロードマップの中では、「直ちに取り組む対応」として、


①太陽光発電の適地への最大限導入に向け、関係省庁・機関が一体となって、公共施設、住宅、工場・倉庫、空港、鉄道などへの太陽光パネルの設置拡大を進める

②温対法等も活用しながら、地域主導の再エネ導入を進める。

③出力維持に向けた点検・補修などのベストプラクティスの共有を図る

④FIT/FIP 制度について、発電コストの低減に向けて、入札制度の活用を進めるとともに、FIP 制度の導入を拡大していく。


となっており、ここまでは既存の方針通りと言えます。

注目したいのは、

⑤FIT/FIP 制度によらない需要家との長期契約により太陽光を導入するモデルを拡大する。

⑥再エネ出力安定化に向け、蓄電池併設や FIP 制度の推進による、需給状況を踏まえた電力供給を促進する。


はい、ここですね。⑤に関しては、需要家と発電事業者を直接結び付ける、コーポレートPPAを意味しているものと思います。

また、⑥で蓄電池の併設に言及しているのも面白いですね。


次に、「中長期的な対策」として以下のように書かれています。


①再エネ導入拡大に向けて重要となる系統整備及び出力変動への対応を加速させる。系統整備の具体的対応策として、全国大での系統整備計画(以下「マスタープラン」という。)に基づき、費用便益分析を行い、地元理解を得つつ、既存の道路、鉄道網などのインフラの活用も検討しながら、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備を進める。地域間を結ぶ系統については、今後 10 年間程度で、過去 10 年間と比べて 8 倍以上の規模で整備を加速すべく取り組み、北海道からの海底直流送電については、2030 年度を目指して整備を進める。さらに、系統整備に必要となる資金調達を円滑化する仕組みの整備を進める。


やや長いですが、「全国規模での系統整備や海底直流送電の整備を進める」ために、「既存の道路、鉄道網などのインフラの活用」をうたっている点はすごく興味深いですね。

これは既存の送電鉄塔による送電網だけではなく、共同溝などの地中電線管路や、日本中に張り巡らされた鉄道も送電インフラとして活用していくことだと解釈できます


②出力変動を伴う再生可能エネルギーの導入拡大には、脱炭素化された調整力の確保

が必要となる。特に、定置用蓄電池については、2030 年に向けた導入見通しを策定し、

民間企業の投資を誘発する。定置用蓄電池のコスト低減及び早期ビジネス化に向け、

導入支援と同時に、例えば家庭用蓄電池をはじめとした分散型電源も参入できる市場

構築や、蓄電池を円滑に系統接続できるルール整備を進める。


これは現在進められている系統用蓄電池の整備事業を意図していると思われます。


③長期脱炭素電源オークションを活用した揚水発電所の維持・強化を進めるとともに、 分散型エネルギーリソースの制御システムの導入支援によりディマンドリスポンスを拡大することや、余剰電気を水素で蓄えることを可能とするための研究開発や実用化を進めることなど、効果的・効率的に出力変動が行える環境を整える。


④太陽光発電の更なる導入拡大や技術自給率の向上にも資する次世代型太陽電池(ペ

ロブスカイト)の早期の社会実装に向けて研究開発・導入支援やユーザーと連携した

実証を加速化するとともに、需要創出や量産体制の構築を推進する。


⑤浮体式洋上風力の導入目標を掲げ、その実現に向け、技術開発・大規模実証を実施するとともに、風車や関連部品、浮体基礎など洋上風力関連産業における大規模かつ強靱なサプライチェーン形成を進める。


⑥太陽光パネルの廃棄について、2022 年 7 月に開始した廃棄等費用積立制度を着実 に運用するとともに、2030 年代後半に想定される大量廃棄のピークに十分対処できるよう、計画的に対応していく。


これらはこれまでの路線の踏襲ですね。


⑦適切な事業規律の確保を前提に、地域共生型の再エネ導入拡大に向け、森林伐採に

伴う影響など災害の危険性に直接影響を及ぼし得るような土地開発に関わる許認可取得を再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法上の認定申請要件とするなどの制度的措置を講ずる。また、既設再エネの増出力・長期運転に向けた追加投資を促進する制度的措置も講ずる。


おっと。おっと?

FIT/FIPの認定申請要件に、林地開発許可が必要になるということ?

林地開発許可は市町村の長が許可権者なので、事実上市町村がFIT/FIPの認定申請について、強い権限を持つということですね。これは結構重要な変更点です。

それに、「既設再エネの増出力・長期運転に向けた追加投資を促進する制度的措置」をとるということは、具体的にはどういうことなのでしょうか?

これはおそらく事後的蓄電池と言われる、FIT認定後の蓄電池導入のことだと思われます。FITからFIPに導入する際、これまで禁止されていた事後的蓄電池を解禁する話は依然からワーキンググループで検討されていました。また現行制度では太陽光パネルは認定後出力や枚数などの変更に規制がありますが、これも緩和されるものと思われます。


⑧再エネの更なる拡大に向け、安定的な発電が見込める、地熱、中小水力やバイオマ

スについても、必要となる規制や制度の不断の見直しを行うなど、事業環境整備を進

め、事業性調査や資源調査、技術開発など、それぞれの電源の特性に応じた必要な支

援等を行う。


以上、正月早々なかなか重たい内容でしたね。

しかし、電力インフラの充実に関しては、今年の通常国会の大きなテーマになりそうです。

私たちも、建設業者としてインフラの一端を担うものとして、今後の動きに注目していきたいと思います。


閲覧数:24回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page